金融機関向け勉強会実施報告。金融庁が進める事業性評価・ローカルベンチマークの取り組み方とは?

第一回 金融機関様向け/事業性評価機能を高める「情報活用塾」
 ランドスケイプでは、金融機関様限定の勉強会として「事業性評価機能を高める「情報活用塾」を全四回のプログラムで実施しています。7月22日(金)に第一回目を開催しました。講師として、金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」の座長を務めている「成城大学村本名誉教授」に登壇いただき、「知的資産経営報告の活用」について解説いただきました。

【知的資産経営報告の活用】
地域金融研究所 成城大学村本名誉教授

1.地方創生の必要性

 地方創生は「ローカル・アベノミクス」として2014年から政策課題として取り上げられていますが、地方都市の「シャッター通り化」が健在した30年以上前から取り組まれている課題です。この30年で様々な施策が行われていますが、成果は不十分と言えます。今後、東京を除く都市圏、地方圏では人口の減少、事業数の減少の加速が予測されており、地方創生の重要性はこれまで以上に高まっていくものと思われます。
 地方創生において、雇用機会創出、地域の活性化を担うのは「地元企業」がメインプレーヤーといえます。企業に対し適切な融資、アドバイスを行う事が今後の金融機関の課題といえます。

2.リレーションシップバンキングと事業性評価

 金融機関が地方企業の力になっていく為には、過去情報(財務諸表、担保)に頼った企業評価だけでは不十分です。企業の将来価値(非財務情報、定性情報、ソフト情報)を的確に把握する事が必要となっていきます。そこで注目を集めたのが「リレーションシップバンキング」です。リレーションシップバンキングは、財務諸表や資産担保といった情報を重視する「トランズアクション・バンキング」とは異なり、顧客との長期継続的関係から得られる情報を重視する手法です。経営者の資質、取引年数、業界ネットワークといった定量化が困難な信用情報を蓄積する事が可能です。
 リレーションシップバンキングは、リーマンショック、東日本大震災、EU危機などによる混乱で取り組みが遅くなりましたが、2014年9月に金融庁から公表された「事務年度方針」に「事業性評価」が登場して以降、再び注目されています。企業の財務情報だけでなく、非財務情報を評価に含む事業性評価の実行には、経済産業省が提唱する「知的資産経営」の手法が活用出来ます。

3.知的資産経営の活用

 事業性評価のベースとなる知的資産経営とは、企業が持つハード情報(財務情報)、ソフト情報(非財務情報)を見える化させる手法です。概念としては以下の図のようなイメージとなります。

 ハード情報、ソフト情報を織り交ぜた形で企業の分析を行い、報告書にまとめる事で該当企業の価値を財務諸表以外の部分で把握する事が出来ます。知的資産経営に基づく報告書が具体的にどのようなものかは、経済産業省の以下のページからご覧いただけます。

知的資産経営報告書 開示情報一覧
http://www.jiam.or.jp/CCP013.html

【事例:信用金庫】
 ある地方の信用金庫では知的資産経営を教えるセミナーを開催し、地元企業に講習を行っています。セミナーを受講した25%の企業が実際に報告書を作成しました。結果、報告書を作成した企業の3割の企業に対し、新規融資、融資増加が可能となりました。
報告書作成に取り組んだ企業のその後を追うと、業績の向上が見られます。また、従業員数の増加、利益率の増加といった傾向も見られました。知的資産経営を軸とした融資の有効性が見て取れます。

 現在、事業性評価を具体的な指標に落とし込んだ「ローカルベンチマーク」の推進を経済産業省が進めています。この考え方は、知的資産経営報告書の内容をより簡素化し、「産官学金」が企業の共通的な評価指標として活用できるように体系化したもので、詳細な進め方においては5月12日の「金融マーケティング研究会・金融システム研究会合同特別オープン・セミナー」でも紹介したRESASの利用や、ランドスケイプでも保有しておりますが、外部の企業情報の活用等が考えられます。企業情報を活用したターゲットの企業の選定にご興味があればお問い合わせください。

 金融機関様向け/事業性評価機能を高める「情報活用塾」ですが次回の第二回は9月23日に開催します。岡山大学 地域総合研究センター 三村教授をお招きし、「"地域発展協議体"運営事例」について講演いただきます。

執筆者

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株式会社ランドスケイプ

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